冬から春は季節の大きな変わり目。冷たく寒い気(陰気)に覆われていた自然界に、暖かな気(陽気)が増えてくると、冬の間静かに眠っていた動物や植物たちがいっせいに目覚めます
春は芽吹き、生長の季節。一年中でもっとも活気溢れる季節です
ところが人間は、春風が吹くちょうどこの頃、体の変調や不調を感じる人が多くなります
本来は縮こまっていた体が暖かな風を感じて緩み、活発に動き出すはずなのに、そのリズムが自然界と上手に呼応できず、いくら寝ても眠い、だるい、ぼうっとする・・・
逆に、体内の陽気が自然界より早く、急激に高まり、上昇・発散しすぎて、頭がのぼせる、頭痛、目の充血、鼻づまりなど、体の上部に症状が出やすくなる・・・。
生暖かく、意外にわがままな春風が体に入りこみ、春の邪気“風邪(ふうじゃ)”となって悪さをすれば、体のあちこちに痛みが生じたり、痒みなどの皮膚トラブルも起こりやすくなると言われます
そう、まるで春の嵐が体の中で吹き荒れるように…。
中医学では、春は陽気の上昇に伴って「肝」の機能が盛んになる季節。
「肝」とは、単に肝臓本来のはたらきを指すだけでなく、血液の貯蔵や巡り、解毒、神経情緒の働きをつかさどり、目や筋などにも影響するため、「肝」が過剰な反応を起こすと、精神・情緒のバランスを崩し、イライラする、なんとなく落ち着かない、不眠…などの症状が出やすくなると考えられています
おだやかであるはずの春は、どうやら体に不快な症状をもたらす要素がいっぱい。
春の薬膳で、春に起こりやすいさまざまな症状を少しでもやわらげてあげましょう
冬の間しっかり蓄えたエネルギーをぐ〜んと伸びやかに発散させ、陽気が過剰になりすぎないよう、体内の余分な熱は鎮め、「肝」をいたわる食材や肝の機能を調節する働きのある酸味をほどよく摂り入れることが大切です
さらに、春の山菜もたっぷり摂り入れました。高い香りと独特の苦味をもつ山菜。苦味は清熱、解毒作用があるほか、胃腸機能促進、鎮静作用もあると考えられています
厳しい冬を乗り越えた山菜のパワーをしっかりいただきましょう
春、活気づく自然に歩調を合わせ、大らかにのびのびと、心と体をリラックスさせてお過ごしください
レシピ監修&コラム:よしかい ゆき
レシピ&スタイリング:チームKATSUYO
撮影:添田 明也
料理制作:本田&中島