冷えとスパイス
現代女性の多くが体の冷えを感じながら生活しているといわれます
体の冷えを中医学的にみると、その根底には体を温める力(=陽気)が足りない、温める力が全身に巡らないといったケースが多く、原因として、胃腸の弱りや血液不足、気血の巡りの悪さなどが複雑に絡み合っていると考えます 冷えた状態が長く続くと、内臓や皮膚に血が巡らず、肌がかさついたりするほか、細胞の働きが鈍化し、体が凝ったり、節々が痛んだり、果ては免疫力も低下して風邪をひきやすくなるなど、悪循環に陥ってしまいがちです
さらに、中医学では、冷えは“腎”に深くかかわっていると考えます
“腎”とは、排尿など水分調節機能のほか、生長・生殖など生命エネルギーのもとである“腎精”を貯蔵する大切な器官 冬は汗による水分代謝が減り、主に尿を通じて行われるので、トイレが近くなりがちで、腎にも負担がかかりやすくなっています 冷えによって“腎”の血流が悪くなると、“腎精”を消耗し、新陳代謝も悪くなり、その結果、顔色がくすむ、肌や髪にツヤがなくなるなど、老化が進んでしまうのでご用心
体を冷えから守るには、気・血を補い、「腎」を養って、陽気を十分に体に巡らせてあげることが大切です
さて、そんなときに、活用したいのがスパイス スパイスというと、とにかく辛い、暑い夏に汗をかきながら食べる料理に使うというイメージがありますが、もともとスパイスは、料理に香りやアクセント、色を加えて味に深みや個性を与えてくれる自然の植物 辛みのないものも少なくありません さらに、スパイスの多くが、体を温める、血液循環をよくする、消化・吸収・代謝・食欲を促すなどの作用があるという優れもの 漢方系の胃腸薬の成分をよく見てみると、馴染みのあるスパイスの名前が並んでいるのも納得です 中国の伝統医学(中医学)や欧米のアロマテラピー、インド古来の医術アユルベーダなどでは、現在もスパイスを専門医が薬用として処方しているのです
専門医が処方している国もあるというくらいですから、使い方には気をつけなくてはなりません スパイスは刺激性もありますし、スパイスの過剰摂取は、大量の汗をかかせて体の津液(必要な水分)を過度に発散させてしまい、逆に体を冷やす可能性もあります スパイスは、適量を、日々の食事に上手に使って、料理をより美味しくする範囲で使いましょう ほどよく使うことで、胃腸を健康に保ち、食べ物の栄養吸収を助け、代謝力のアップや、体を温めるのに役立つことが期待できるのです さらに冬の薬膳では、気血を補い、巡らせ、腎を養い、体を温める食べ物がおすすめです これらの食材とスパイスを、双方の持ち味を高めあうように組み合せることが大切です
<冬の薬膳におすすめの食材>えび、ぶり、サバ、鮭、カキ、牛肉、羊肉、鶏肉、もち米、黒砂糖、くるみ、芋類、根菜類、玉葱、にんにく、ほうれん草、にんじん、玉ねぎ、大根、小松菜、ニラ、ねぎ、にんにく、豆類、柚子、クコなど。
今やスーパーにずらりと並び、ずいぶん身近になったスパイス けれども、“使いこなすのは意外に難しい”、という声をよく聞きます。
そこで、「台所の薬膳塾 新春特別企画」では、スパイスを全部で10種類、週ごとに1つずつ取り上げ、その特徴や使い方を勉強していきたいと思います “スパイス上手は温め上手”な冬を一緒に過ごしましょう
薬膳監修・企画&コラム:吉開有紀
レシピ&スタイリング:チームKATSUYO
撮影:添田明也
料理制作:本田明子&中島さなえ