大根

2回目 大根の栄養・薬膳・効用
3 栄養・薬膳・効用

 冬の大根は水分が多く、この時期の大根は甘いです。そして、”自然の消化剤”と言われる程、「胃腸の働きを活発」にしてくれます。これは多種類の酵素がぎっしり詰まっているためです。

澱粉分解酵素のジアスターゼには「消化を促し」、「胸焼けの予防」になります。「抗ガン効果のある」酸化酵素のオキシターゼも含まれています。

ビタミンCも豊富ですから、”疲労回復やお肌にも効果的”。”高血圧に効果を発揮”する、カリウムも多いです。
又、皮には”毛細血管を強く”する、ルチンも含まれています。葉はすでにない事が多いのですが、葉にはβ-カロテンやカルシウム食物繊維も豊富です。

さらに、切ったりすりおろしたりすることで出てくる辛味成分のイソチオシアネートには消炎や殺菌の働きがあって”カゼ予防”にも効果的です。

 大根の優れた要素してあげられたジアスターゼですが、この消化酵素、でんぷんが大根エキスをすうと、分解が始まり糖に代わる仕組み。ただし、いくら大根とてお腹には限界がありますので暴飲暴食をしていいということではありませんので、くれぐれもお気をつけください(笑)

 さて、「葉部分」は大抵ばっさり切られて売られていますが、外葉は固いですが、”中心部は柔らかく美味しい”ので、是非食べてみてください。

下ゆでして刻んで、炒め煮にしたり、ふりかけにしたり、塩をして菜飯にしたりと、楽しめます。他の葉物と混ぜて、お浸しやごま和えもいいものです。


 ここで、昔の句をご紹介しましょう。

「大根は汁菜にして食すべし。脾胃の薬ぞ百病を治す」

これは、江戸初期にまとめられた和歌形式の食物本草書『宣禁本草集要歌』(せんきんほんぞうしゅうようか)の中の一句です。中国、明(みん)の時代に李時珍(りじちん)が著した本草書『本草綱目』(ほんぞうこうもく)が日本にもたらされた後にできた書物です。その頃、江戸の人々の間では食養生の知識や教訓を歌にして覚えやすいようにするのが流行したといわれています。


脾胃は今風に言うと消化器官系統(胃腸系)のことを指します。
「大根は胃腸の薬。胃腸を丈夫にすることは多くの病を治すことに通じるので汁物やおかずにして大いに食べるべし」と薦めています。江戸の人々が歌を暗唱しながら大根を切ったり煮たり、すりおろしたりしていたのかな、と想像するだけで楽しい光景ですね。

 もうひとつ、大根と言って忘れてならないのは、昔から喉の痛みや咳止めに用いられてきた「大根あめ」。今はキャンデーの大根飴が思い浮かぶ人も多いかもしれませんが、あちらではなく。大根そのものを使う、江戸時代から伝わる民間療法と伝わっているものです。

だれが最初に発見したのか定かではありませんが、喉に良い大根を蜂蜜につけてひと晩置くと汁がたっぷり出てきます。このエキスをそのままスプーンで潤す様に飲んだり、湯を注いで飲みやすい甘さで頂きます。

大根を1cm角に切って瓶に入れ、水あめ(または蜂蜜)を注いで蓋をして、2〜3日ほど置くと、大根の成分が水あめに溶け出してきます。そのエキスを一日に2〜3回飲むと、喉の炎症を鎮め、咳や痰を取り除いてくれます。

ものすごくこじらせた時には、さほど効果は感じられないかもしれませんが、なんかおかしいと感じた時の効果はなかなかいい感じです。

 また、現代になってから、大根にはジアスターゼなどの分解酵素が含まれ、食べものの消化を促進し、「胸焼け」「胃もたれ」「二日酔い」などに効果的であること。

豊富な食物繊維が腸を整え、腸内の老廃物を洗い流して「便秘解消」「大腸がんの予防」や「吹き出ものの予防」にも役立つこと。

切ったりすりおろしたりすることで出てくる辛味成分のイソチオシアネートには消炎や殺菌の働きがあって「カゼ予防にも効果的」であること、などが続々とわかってきています!!

身体に沁みる薬膳料理

また、昔から農家では大根の保存にも使われた、切り干し大根、割干し大根、ゆでぼし大根などの保存用に加工されたものも沢山あります。これらは水で戻してから使ったり、漬けものなどに使っていました。野菜は干すと、うま味が増して栄養価がアップします。大根の場合はカリウム、カルシウム、鉄分などがとてつもなくググ―ンと高くなるのです。

江戸時代の暮らしを考えたら、人々の生活は大きく変化していますが、体が食べものから受ける恩恵は、昔も今も変わらずに、真っ直ぐな一本の線で繋がっているように思えてなりません。春の七草のひとつでもあり、古くは「すずしろ」、「大根(おおね)」と呼ばれ、親しまれ続けてきた“大根”。

食養生が人々の身近にあった時代のように、これからもずしりと重く堂々とした存在感をもって、日本の台所の常備薬として活躍してもらいたい根菜の一つです。

1回目 大根の歴史・種類
3回目 大根の旬・買いもの・保存
4回目 大根の調理・取り扱い

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