薬味とは漢字で“薬”という字を使うように、体にいい影響をもたらす効果が詰まった食べもののこと。
食の世界では『薬味』という言葉が頻繁に出てきます。
江戸時代に発達し完成形に近い状態になった和食は、薬味野菜をそれぞれの料理に上手に使い、受け継がれてきました。和食にとっての薬味とは見栄えだけではなく、毒消しの効果や、よりいっそう料理を美味しくさせる人の知恵なのではないでしょうか。
例えば“まぐろの刺身にはわさび”、“カツオには生姜や葱”、“鰻には山椒”とならべると、その相性と薬味の果たす役割がお分かりになるかと思います。和食に添える薬味野菜は、添えるだけで見た目もお洒落になることが多く、器も含めてアクセントとなり、欠かせない名脇役たちばかり。
キッチンスタジオの本棚には、昭和36年に発行された『薬になる食べもの』(村井米子著)という食生活について執筆された本があり、半世紀以上前の本ではありますが、その中の一節で
『葱は生で食べると発汗作用がある、しその葉は、爽やかな香気で食欲をすすめます。これは昔からの習慣です』
と記載されています。つまり、昔から脈々と伝わってきたことなんですね。
体にいい食べものとは、自然界から生まれたものが殆どであるといえることなのですが、薬味野菜に限定した場合、わずかな量で香りがたち、味も風味もガラリと変える力を持っていることが特徴です。また、単調な味はググッと、食欲をそそるような効果も期待でき、粋だったり、あか抜けたりといった表現がピッタリなことも。
日本は四季折々の季節がやってきますが、その季節に合う薬味が年間を通をじで登場し、また、その旬野菜との相性が抜群なことは、もし大地の神様がいるならば感謝したい気持ちになりますね。
しかしながら日本の春はアレルギー満載で、夏は高温多湿、秋は台風、冬は長く寒くと、なかなかに過酷ですが、薬味を食べることによって、春はデトックス効果があったり、夏は体を涼しくしてくれたり、お疲れ気味の秋には食欲を促したり、冬は体を温めてくれたりと、薬味は小さくても優秀な食材だと思いませんか?