カレーパウダーについて、日本では一般的に“カレー粉”という商品名で売られており、これはブレンドされたミックススパイスのこと。カレーパウダー発祥の地はインド?と思いがちですが、実はインドからスパイスを持ち帰ったイギリスです。スパイス使いに慣れていなかったため、あらかじめ調合したものをイギリス料理のシチューに加え、小麦粉でとろみをつけ、インド風カレーを作ったと言われています。
日本には文明開化の頃、この英国式カレーが洋食のカレーライスとして伝来し、一緒にカレーパウダーも持ち込まれました。その後カレーは、お米と一緒に食べられる洋食ということもあってか、はたまた日本人の微妙な味の好みにマッチしたのか、日本の国民食と呼ばれるまでに普及し、カレーパウダーはどの家の台所にも常備されるスパイスになりました。
一番最初のカレーライスは、明治5年ごろにどこかに掲載された“蛙肉とハマグリのカレー”という記事。実はかれこれ25年位前に、その当時の資料をもとに、キッチンスタジオのスタッフがテレビ放送で、実際にデモンストレーションいたしました。師匠は蛙が怖くてさばけず、RKさんが作った次第(笑)。収録後全員で食べましたが、大変に美味しかったです。
ところで、カレーパウダーにはどんなスパイスがミックスされているのでしょう。ここでスパイス名をスラスラと挙げられる方は、きっと相当なカレー通。たいていの方は、普段何気なく使っていたり、あるいはカレーパウダーという一種のスパイスがあると思っている方もいらっしゃるかもしれません。せっかくの機会ですから、カレーパウダーの中身を探ってみましょう。
カレーパウダーを構成するスパイスは、厳密に決まっているわけではなく、カレー粉を製造するメーカーによっても違い、何種もブレンドされているため、その中身はお国柄も反映されると言われています。一般的には『赤唐辛子、ジンジャー、ブラックペッパー、ターメリック、クミン、シナモン、クローブ、ナツメグ、コリアンダー、マスタード、カルダモン、ガーリック、フェネグリーク、カレーリーフ、ローレル』などが組み合わされ、だいたい上記にあげたものが、カレーパウダーとしてよく使われているスパイスです。
辛味を出す赤唐辛子、色づけをするターメリック、独特な風味をかもしだすクミン…など、よくよくみると、単独で活躍しているものの集合なんですね。
カレーパウダーとは文字の通り、それぞれのスパイスを粉状にしていますが、欧風カレーは大胆に粗めにつぶして、パウダーと両刀使いするカレーです。それらを出すレストランも、最近はずいぶんと見かけるようになりました。その中のターメリックは、”ホールタイプ”と”パウダータイプ”のどちらを使うかはっきりとした決まりはないようですが、”パウダータイプ”のものでないと黄色い色が上手に発揮されません。
その他のスパイスは、ホールとパウダーを上手に組み合わせることで、味により深みが生まれると言われます。焦げつかないように炒めたあと、冷めてからパウダー状になるまですりつぶせば、カレーパウダーの出来上がり。色、香り、風味がバランスよくブレンドされ、スパイス同士がよいところを引き出しあって、美味しいミックススパイスになるのです。
ここでカレーの本場インドのお話を少し。インドには、そもそもカレーパウダーというものはありません。なぜかと言えば、自分でスパイスをブレンドすることが料理の基本だからです。よい料理人になるには、よきスパイスブレンダーになることが求められます。家庭でも同様に、台所をあずかる人が、料理の度に食材や体調に合わせてスパイスを組み合わせ、専用の小さな石臼で挽いて使うところから始めるのが今でも一般的だそうです。
明治から、昭和、そして平成へと、カレーは様々な形で歴史を刻みつつあります。いまの季節は気がつけば三寒四温をくりかえし、春はいつのまにか初夏へと移り変わります。冬の間、寒さで縮こまっていた体をのびのびと発散させてあげていますか?そんなときにも、スパイスがもつ消化促進作用や代謝力アップ効果を上手に活かしてみて下さい。すでに何種類ものスパイスがブレンドされたカレーパウダーをおおいに活躍させましょう。
香辛料は薬や美容の世界でも広く使われる?
香辛料は薬や美容の世界でも広く使われ、それぞれに効用があるのも素晴らしい食材です。たとえば、普段からよく使われている、胡椒は消化を助けたり、鼻づまりにいいとか。シナモンは体を温め胃腸の調子を整える、といったことが昔から言われているわけです。
ただし、日本人はインドやバングラデッシュの人々みたいに毎日の食事の中にスパイスを取り入れることは、ほとんどないと思います。勢いでスパイスを買い集めても、3カ月〜半年で香りと風味がともに、味も落ちていきます。封を開けてから1年たったものでは美味しいカレーを作ることはむずかしくなります。だから、大きいのを買わずに、一番小さいサイズのカレーパウダーを購入するといいでしょう。