歴史
さつま芋の別名は “甘薯”、他にも琉球芋、唐芋とも言います。原産地は中央アメリカ。紀元前3000年以上前にはすでに存在、そのあと、コロンブスのアメリカ大陸到達とともに、ヨーロッパに渡り、世界に広まったとされています。
さつま芋は英語では“Sweet potato”、フランス語だと“patate douce”。
“さつま”とは鹿児島のこと。
日本に渡来したのは、1615年に平戸に持ち込んだ説と、琉球(いまの沖縄)から薩摩(鹿児島)経由でひろがったという説。そのころの文献だと、さつま芋は甘薯ではなく、番薯。 “番”というのは、中国では外国のことをさします。その後、芋の甘さから、甘薯という名が一般化されていきました。
“さつま芋”は大変古くから、栽培され、愛され、江戸時代の食糧難や飢饉を救ってきました。人々の命の綱となったことでも知られている優秀な野菜のひとつ。今は“芋”といえば、じゃが芋をイメージする人が多いですが、江戸時代、明治時代は芋といえばさつま芋のことをさすことが多かったのです。しかし、じゃが芋が一般家庭にに普及するようになると、その辺が紛らわしくなったため、“甘薯”や“さつま芋”、“馬鈴薯”や“じゃが芋”とはっきり区別して使われるようになったといいます。
また、第二次世界大戦の食糧難のときには米がなくなってもさつま芋だけはなんとかあったために米の中に炊いたり、粥にたくさん混ぜて増量して食べるというシーンは今でも、語り継がれ、映画やテレビのひとコマなどでもおなじみで、沢山の人の脳裏に焼き付いているのはないでしょうか。又、それがトラウマとなって、いまだに戦争を体験した人の中にはさつま芋ご飯、芋粥、ひどい人になるとさつま芋そのものもあまり食べたくない人が少なくありません。
種類
市場に多く出回っているのは、紅赤(金時)、紅あずま、紅小町、紅おとめ、紅薩摩、紅ハヤト、高系14号、山川紫、黄金センガン、農林1号。
昔は、甘みのない、いわゆる無骨なサツマイモも多かったのですが、最近は美人なさつま芋が多く、味も改良されているのか、砂糖のように甘く繊維が繊細になっていて、口当たりもなかなか良くなっています。
おもな産地は、千葉、徳島、茨城など。さつま芋といえば、紫色の芋が主流ですが、黄金センガンのように白い芋や、沖縄が特産の紫芋も皮だけでなく、中身にもポリフェノールいっぱいのため、最近ではかなり知名度を上げています。ソフトクリームや、チップ、ケーキなどにもよく使われてますが、芋そのものは、それほど甘みは強くありません。
薄い茶紫色の「安納芋」も人気が高いですね。中身はオレンジがかり、ねっとりした食感が独特で、焼き芋にも抜群の美味しさを発揮します。
他にも、ナルキンこと鳴門金時は、値段が高めですが味は甘みが強く、キメこまかく、裏ごしの手間がかからないせいか和菓子やケーキ屋さんで、人気抜群です。
また、地域によっては、さつま芋の葉をお茶にして飲んでいる地域もあり。その地域の人たちは長生きが多いことから、注目を集めている”シモン茶”の存在も面白いところです。また、葉ガラごと、野菜として食べる地域が飛騨高山、三重、福岡に存在しているようなので、ぜひ、旅にでることがあれば、出会いたいものです。
国内で現在、食用として栽培されているものは、さつま芋全体の45%程度で、残りの55%はお酒の原料やでんぷん、または飼料用として栽培されています。
栄養と効用
野菜の中でもピカイチ炭水化物の多い芋のため、さつま芋と言うと、何となく太ってしまうという印象をお持ちの方も多いようです。「芋姉ちゃん」等とあまりいい使われ方もされなかったり、いま一つのイメージ。しかし栄養価や効能の価値は高いのです。
さつま芋の栄養成分のほとんどはでんぷん質。そのでんぷん質が肌に影響するビタミンCを守るのです。美容に効果的なビタミンCは、しわ、しみ、風邪の予防にも効果的。1本200g位のさつま芋を食べると、体が酸化するのを防ぎ、老化防止のビタミンとも言われるビタミンE、ビタミンB6、葉酸、パントテン酸、抗酸化作用があり、通常は熱を加えると壊れやすいのですが、加熱しても澱粉がガードしてくれるので壊れません。
むくみ防止のカリウム、銅、モリブデンも含まれ、さつま芋1本で1食分に必要なこれらの栄養摂取量をクリアしてしまうほど、ビタミン、ミネラルが多いのです。その為エネルギーの代謝が良くなり太りにくく、ダイエット効果が期待できます。芋類の中ではカルシウムも多く、骨を丈夫にしてくれるとう効果もあるのですから、江戸時代の飢饉をすくったというのもうなずけます。
又さつま芋には“ヤラピン”という成分が含まれています。芋を切ったときしばらくすると切り口から白い液が出てくるこれは、さつま芋独特のもので、他の作物には含まれていません。この成分は便秘の特効薬!食物繊維(セルロース)ばかりでなく、このヤラピンという成分との相乗効果によって便秘の改善がされるわけです。皮の赤紫にはアントシアニンつまり、抗酸化作用があり、ガンや動脈硬化、高血圧などの、生活習慣病の予防に役立ちます。皮ごと食べる料理はさらに効果がアップというわけです。さつま芋の種類も色々ありますので、この季節には、女性ばかりではなく男性もなるべく食べることをおススメします。
一日1回は芋を食べる習慣を、栄養的には習慣づけたいもの。甘いお芋はおかずにはなりにくいものですが、献立にうまく取り入れるとバランスのいいおかずになりますよ。
意外と知られていない!?
普通に煮てもおいしいのですが、短時間で一気に火を入れるより、55〜60度の範囲で熱を入れる時間が長いと、でんぷん質が分解されて、麦芽糖(マルトース)が生まれて元の甘さよりグーンと甘くなります。
この現象は日本の女子・婦人の大好きな焼き芋のそれです!甘いブランド芋をさがすという手もありますが、調理の技術でも味をアップさせることができますので、さつま芋好きはおぼえておくといい情報です。さつま芋の美味しい甘味は、電子レンジでの加熱では、うまれてこないことも併せて覚えておくといいでしょう。